ルミエールサロンのスタッフさんにインタビュー

写真:ルミエールサロンの入り口

このたび、高知県内で視覚障がい者の方々をサポートされているルミエールサロン様にインタビューをお願いしたところ「利用者の声ということで、私たちが出てよいものか少し迷いましたが、それでもよろしければ、ぜひお引き受けさせていただきます」と、快く応じてくださいました。

金平景介(かねひら けいすけ)さんプロフィール

公益財団法人 高知県身体障害者連合会
視覚障害生活訓練指導員(歩行訓練士)

写真:インタビューに答える男性

新潟県出身 国立障害者リハビリテーションセンター視覚障害学科 修了
大学卒業後、埼玉県にある国立障害者リハビリテーションセンター学院 視覚障害学科に入学し2年間歩行訓練士になる勉強をしました。
その後、現職である高知県身体障害者連合会に入職し、2025年で20年目を迎えます。

私の父は視覚障害で、我が家に初めてやってきたパソコンも音声が出ていて、高知システムさんのアプリケーションが入ってました。
ですので、パソコンというのは、はじめからしゃべるものだと思っていました。

中川理紗(なかがわ りさ)さんプロフィール

公益財団法人 高知県身体障害者連合会
視覚障害生活訓練指導員(歩行訓練士)

写真:マスクをした髪の長い女性

高知県出身 日本ライトハウス養成部 修了
大学卒業後、一般就労をしたのち、現在の高知県身体障害者連合会に入職しました。
入職後は1年間、訓練補助という形でルミエールサロンに勤務し、その後、大阪の日本ライトハウスの養成部で2年間歩行訓練士になる勉強をしました。

恥ずかしながら、高知システム開発さんやPC-Talkerシリーズのことは、ルミエールサロンに入職してから初めて知りました。
しかし、PC-Talkerを使って毎日のニュースを確認したり、調べ物をしたり、動画を楽しんだりと、「見えにくくなって一度は諦めていたことを再び楽しめるようになった」という利用者さんの声を聞く中で、PC-Talkerの持つ力の大きさを実感しています。

ルミエールサロンは今年から「高知県視覚障害者ICTセンター」としての活動も始まりました。
今後も、こうしたICTの力を活かして、利用者の方々の「やりたい」を支えられる支援を続けていきたいと感じています。

日浦胡桃(ひうら くるみ)さんプロフィール

公益財団法人 高知県身体障害者連合会
視覚障害生活訓練指導員(歩行訓練士)
社会福祉士

写真:ショートカットの女性

高知県出身 日本ライトハウス養成部 修了
大学卒業後、すぐに高知県身体障害者連合会に入職しました。
入職した4月からそのまま大阪の日本ライトハウスの養成部で2年間歩行訓練士になる勉強をしました。

私たちの日常生活は今やICTで溢れかえっていますが、目が見えない・見えにくくなった方もパソコンを使うことができる方法があるというのを訓練士になって初めて知りました。
以前パソコンを使っていたけど視力が落ちて自信がなくなった方や、パソコンを使ったことがない方にも高知システム開発さんや音声ソフトのことを知ってもらって、その支援を私たちでお手伝いをできたらと思っています。

ルミエールサロンの活動内容を教えてください

ルミエールサロンは、高知県立盲学校内に常設された視覚に障がいのある方のための福祉機器展示室です。
補装具や日常生活用具に設定されている物から、100円均一やホームセンターで購入のできる視覚に障害のあるかたが便利に生活できる為のグッズを約500点展示しています。

高知県からの委託を受けて、公益財団法人 高知県身体障害者連合会が運営しています。

ここでは、視覚障害生活訓練指導員が3名常駐し、見えない見えにくいことでお困りの方を対象に、歩行訓練やICT訓練(スマートフォン・タブレット・パソコンの使い方)、日常生活訓練、補装具・日常生活用具のご紹介など、さまざまな相談や訓練を行っています。

ご利用の対象は、高知市以外の市町村にお住まいの方で、身体障害者手帳の有無に関わらず、高知県内であればどこでも無料で訪問支援が可能です。
高知県安芸郡東洋町甲浦のご利用者さんのお宅へ約1年間毎週、車で約3時間かけてかよったこともありました。

高知市役所には、私たちと同じ職種の職員が3名いらっしゃいます。
そのため、高知市にお住まいの方からご相談があった場合は、高知市役所の職員が対応することとなっています。

写真:机の上に置かれたルミエールサロンのリーフレット。「見えにくい方見えない方、ご本人・ご家族・支援者どなたでもお気軽にご相談ください」と書いてある。

ルミエールサロンへの依頼は、高知市役所や地域包括支援センターのケアマネージャーさんやソーシャルワーカーさんからが多いですが、ルミエールサロンのホームページを見て直接ご連絡をいただくこともあります。
最近では、眼科やロービジョン外来を専門とする病院の先生からのご紹介も増えてきています。

年間の利用者数は150名ほどで、訪問回数は年間500回程度にのぼります。

支援は訪問形式が中心ですが、ご希望に応じてルミエールサロンへお越しいただくこともありますし、Skype(Teams)を使った画面共有によるオンライン支援もおこなっています。

昨年度の実績では、ICT関連のご相談が全体の約半数を占め、残りは歩行訓練や日常生活に関するご相談となっています。

視覚障害生活訓練指導員の業務について教えてください

視覚障害生活訓練指導員(歩行訓練士)の業務は、視覚に障がいのあるかたが自立して安心した生活を送れるよう、日常生活に必要なさまざまな訓練や相談を行うことです。

例えば、日常生活訓練では、包丁の安全な使い方や電子レンジを活用した調理方法、お湯が沸いたことを判断する方法などを指導しています。
あわせて、掃除のやり方や衣類の管理、薬を間違えずに区別するコツなども当事者の方やご家族、支援者の方と一緒に考えながら支援します。

写真:ボタンの形が触ってわかりやすいIHコンロ。雪平鍋と両手鍋が置いてあります。隣には炊飯器の展示も。
写真:ラックにたくさんの白杖が刺さっています

歩行訓練では、白杖を使った歩き方など屋内外での安全な移動の仕方を練習します。

ICT訓練では、パソコンやスマートフォン、タブレットを使えるようになるためのお手伝いをしています。
視覚障がい者向けの便利な支援機器やアプリについてもご紹介しています。

その他、点字の読み書きを学ぶ点字訓練や、ハンドライティング訓練といって、自分の名前を書いたり、選挙のときの記入を想定した練習もおこなっています。

高知県の支援の特長・他県との違いがありますか?

高知県の視覚障がい者支援は、我々の現場と行政機関、当事者団体との連携がしっかりできていることが強みだと思っています。
県や市町村の担当者さんは定期的な異動があるので、細やかな啓発活動がとっても重要だと思っています。

最近では眼科などの医療機関と支援機関との連携がしっかりしているので、支援が必要なかたがスムーズに必要なサービスにつながりやすい仕組みができつつあると思います。
県の規模がコンパクトだからこそ「ここに相談すれば大丈夫」という仕組みができているのも、高知県ならではの良さだと思います。
さらに、高知県では訪問支援を受ける際の 利用料や訪問料、回数などの制限がなく、必要に応じて柔軟に対応しています。

写真:話をする金平さん。手で輪っかをつくっています。

人的体制も充実していて、視覚障害生活訓練指導員が3名体制で活動しており、高知市以外の地域を広くカバーしています。
都市部を除く県で、複数名が専任で動けている県は非常に少なく、高知県の強みのひとつです。

また、高知県立盲学校内に常設され、外部に開放されている視覚障がい者向けの機器展示室(ルミエールサロン)があるのは、高知県ならではの取り組みです。
当事者やご家族、支援者が、実際に機器に触れて体験いただけるとても貴重な場所になっています。

このように、高知県の視覚障がい者支援は、医療との連携や地域の特性を活かしたつながり、制度の柔軟さ、専門スタッフの配置、施設の充実など、さまざまな面で特徴的で、他の県と比べてもとても心強い仕組みになっていると思います。

パソコン訓練の利用者について教えてください

ルミエールサロンが運営しているメーリングリストがあるのですが、これまでパソコン訓練を受けた方たちが登録しています。
このメーリングリストは、初めてパソコン訓練して文字入力ができるようになったかたがメール送信を練習する場として開設しました。

お孫さんやラジオ番組にメールを送るのはハードルが高いと感じる方がいたため、気軽に文字入力の練習ができたり、利用者同士のコミュニティの場になると良いなと思いました。
中には、応援している演歌歌手さんのラジオに毎週欠かさずメールを送り続け、ついにラジオで読まれたと報告があった時は、とても嬉しかったです。

写真:音声パソコンの展示コーナー。スクリーンリーダーの紹介。

日々、パソコンの操作や設定について学ぶことが多いですが、最近では「高知システム開発」への電話相談がつながりやすくなっており、遠隔サポートも受けられるようになっていて、とても助かっています。
まずは「MySupport」から遠隔サポートに接続できるようになることを、最初の目標としています。それができれば、その後の対応もスムーズになると考えています。

実際にご自宅を訪問すると、電源が入っていなかったり、ケーブルが抜けていたのが原因だったりして、すぐに問題が解決するケースもあります。
こうした問題が再び起きた時に、利用者自身で対処できるようになることが大切です。そのため、次につなげる意識を持って対応しています。
たとえば、
「ケーブルは口でくわえないようにしましょう。やけどの危険があります」
「コンセントに差すときは手を添えて、ゆっくりと差し込みましょう」
など、安全面を考慮した注意点を、しっかりと伝えるよう心がけています。

パソコン訓練は最近、新規のパソコン利用者はいない状況で、スマートフォンのサポートが多いです。
スマートフォンでは、まず基本操作から、電話を取る・切る、電話帳の操作ができるように訓練をします。さらに、Siriを使っての操作や、フリック操作などジェスチャーの練習、便利なアプリの紹介もします。
最近は写真を撮ると文字を読み上げてくれるアプリをみなさん使用されていますね。

私たちも勧めるのですが、AIスピーカーが最近のトレンドです。
パソコンを始めるのはちょっと難しそう、携帯はガラケーを使っていますという方は、ご家族がスマートフォンやWi-Fi環境を利用していたら設定して使えるので。
喋りかけたら反応するので、便利ですね。

利用者さんのパソコンの楽しみ方

高知システム開発さんは、日頃のサポートで、お客様の相談や困りごとを聞くことが多いと思いますが、本来の使い方とは少し違った楽しみ方をされている利用者さんをお二人ご紹介したいと思います。 

このお二人以外にも、 
「メーリングリストに緊張しながら初めて入力して送信したら、すでにベテランになった利用者の方から長文の返事が来て圧倒され、返信でもまた悩んでしまった」 
「孫からメールに返信が来た!」 
「ラジオでメールが読まれた!」 
とか、独自の使い方で楽しんでいる利用者さんがたくさんいらっしゃいます。 

少しずつパソコンの操作に慣れていって、今はもう生活の一部になっているみたいなことは大きなことだと思います。 

写真:ヘッドセットをつけた人がパソコンに向かっている動画がノートパソコンに表示されている
実際にパソコンを利用されている動画を見せていただきました

Aさんの場合

パソコンがまだWindowsXPの時代のことですが。
Aさんは、パソコンのキーボードでの入力方式を覚えるということに抵抗がありました。
そこで、色々と探して、Bluetooth接続で、当時の携帯入力(ガラケー入力)ができるテレビのリモコンに似た入力デバイスをようやく見つけたのです。壊れても良いように5個くらい買っておいて、ずっと使用されていました。

パソコン訓練だけに言えたことではありませんが、時間をかけて訓練して技術を身に着けることも大切なことだとは思いますが、理想の形は、時間をかけずに、簡単にできるような機器があれば、それに越したことはないとも思います。

Bさんの場合

Bさんは、パソコンでカラオケを楽しんでいます。

次のような手順で操作します。

高知システム開発のソフトではないですが録音ソフトを起動し、MyEditでは事前に入力した歌詞を出します。
録音ソフトで、カラオケの音源を選んで、声を整えて、録音ボタンを押します。
MyEditに切り替えて、歌詞をPC-Talkerで読ませながら、1行ずつ送っていきます。
歌詞を聞きながら、曲に合わせて歌っていくのです。
何度も録音をし直して、良い物ができたら、ご友人に送ります。
その後ご友人の方がYouTubeに上げてくれるそうです。

Bさんは、普通の主婦で、まったくパソコンの操作も器用にできるかたではないですが、少しずつ操作を覚えていってこのように、1人でもパソコンを使ってカラオケを楽しんでいます。

高知システム開発や製品についてご要望はありますか?

高知システム開発に電話をして相談する時は丁寧に対応してくださっているのでいつもありがたいなと思っています。
利用者さんにも「困ったことがあれば積極的に電話して」と伝えています。

時代の流れもあると思いますが、スマートフォンを利用してパソコンから距離を置くかたが多くなっていると感じますので、このままでは厳しいのではないかと外部から勝手に心配しています。
しかし、パソコン操作ができるスクリーンリーダーPC-Talkerの存在は、今後もなくならないものだと思いますし、なくなったら絶対に困るものです。

比べる対象としておかしいかもしれませんが、点字の使用者というのも年々減っていると耳にすることがあります。
しかし、視覚障害者の情報発信、取得の方法として点字は、なくなるものではないですし、お仕事や勉強などで使えるに越したことはありません。
この分野でずっと続けてきた高知システム開発さんのソフトは、それと同じくらい、視覚障がい者にとって必要不可欠な存在だと思います。
特に、長い社歴で培ってこられた日本語の読みなどの質はすばらしいと思います。

写真:スマートフォンを見せているところ

高知システム開発さんは、現在iPhone用アプリMyBook Mobileがありますよね。
以前、当時の営業の方から、Appleとの契約が非常に難しく、公開までに多くのご苦労があったという裏話を伺ったことがあります。
近頃のAndroidは、声質やGeminiなどの性能もだいぶ良くなっていますから、Android用のアプリ開発はいかがでしょうか。
Android版MyBook・MyMail・MyNewsなど需要はあると思います。

例えば、一般的なニュースアプリはカテゴリやリンクなど情報が多く、音声で確認しながら操作する場合、複雑で迷ってしまいます。
その点、高知システム開発のシンプルな画面構成や、スクリーンリーダーでの操作に配慮した独自の設計は、多くのユーザーにとって大きな魅力になるはずです。
そうしたニーズに応える形で、ぜひAndroid版の展開にもチャレンジしていただけたら嬉しいです。

また、ゲームを楽しみたいというユーザーの声もよく耳にします。
「ストリートファイターⅡ」のような格闘ゲームや「どうぶつの森」のようなコミュニケーション型シミュレーションゲームができたらすごく人気が出ると思いますよ。
例えば、AIを利用して、話しかけるだけで、ゲームが進行していくようなRPGなど楽しそうですね。
生活支援だけでなく、娯楽分野でのソフト開発にも今後ますます期待しています。

サービス部担当者より

金平さんは、パソコン訓練の中で特に心に残っているエピソードも教えてくださいました。

学生時代、アルバイトを通じてこの仕事に関わる機会があったそうです。
約2週間のサマーキャンプ形式の企画で、視覚障がいのあるかたを対象にさまざまな訓練が行われる中、パソコン訓練の担当として参加したそうです。
パソコンに触れるのが初めてという方と出会い、毎日一緒に練習し、文字入力ができるかどうかという段階まで取り組みました。

それからしばらくの月日が経ち、ルミエールサロンに入職してからのことです。
当時の関係者だった訓練士さんから一冊の本が届きました。
なんと、それはあの時の訓練生が自費出版された短歌集でした。
付箋が付いていたページには、初めてパソコン訓練した時の様子を詠った一首が載っていました。

あのときのわずかな訓練がきっかけとなり、作品として形に残るまでに至ったことに、心から感動しました。
こうした出来事に出会うたび、私たちの仕事は本当に意味があるのだと実感させられます。
また、「あのときの訓練が今につながっています」と、後になって伝えてくださる方もいて、そうした言葉が大きな励みになっているとのことです。

写真:窓際に立てかけたたくさんの白杖

私たちサービス部も毎日たくさんのお問い合わせをいただきますが、お客様の「できた!ありがとう!」というお言葉をいただけると、本当に嬉しく感じます。
これからもお客様の生活やお仕事にたくさん役立てるように全力でサポートしてまいりたいと思います。

また、今後もっと高知システム開発の認知度を上げるという目標についてもご相談させていただきました。
バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者 内閣総理大臣表彰などの受賞歴や他社製品と比較して優れている点など、高知システム開発の強みをどうアピールしていくかが今後の課題です。

ルミエールサロンと高知システム開発は、これからも連携を深め、高知県内の視覚障害支援をさらに充実させるとともに、その取り組みを全国にも発信していきたいと考えています。